病院は多くの臨床検査技師が就職先として考える職場です。実際に臨床検査技師の8割が病院で働いているといわれています。

病院と一言で言っても、病院の規模によって仕事内容や働き方が大きく異なります。あなたの希望する働き方によって、転職先を選ぶ必要があります。

ここでは、臨床検査技師が病院の求人に応募するときの注意点、具体的な働き方についてくわしく解説します。

病院で働く臨床検査技師の仕事内容

病院の臨床検査技師の求人は、転職市場に多いです。しかし、病院によって担当する仕事内容が異なったり、人員の配置の仕方が異なっていたりします。

そのため、あなたの経験を十分に活かせるかどうかは病院によって変わります。

規模が大きい総合病院は部門が分かれる

最初に解説するのは、規模の大きい総合病院で働く場合です。この場合は、部門が分かれており、特定の業務だけを担当することが多いです。

そして、規模の大きい病院から出される求人では、部門ごとに求人が出されます。

例えば、下に紹介するのは埼玉県行田市にある行田総合病院から出されている求人です。行田総合病院は、病床数500床を超える病院です。

この求人では、生理検査部門で働く臨床検査技師を募集しています。具体的な仕事内容は、以下の通りです。さまざまな生理検査が挙げられています。

この求人で採用されると、担当する業務は生理検査だけです。

また、同時期に同じ行田総合病院から検体検査部門で働く臨床検査技師も募集していました。実際の求人が下の図です。

この求人で挙げられている仕事内容は、以下の通りです。検体検査のポジションの募集のため、検体検査しか挙げられていないことがわかります。

このように、同じ病院から出される求人でも、部門が分かれている場合は、それぞれの部門、担当する仕事ごとに募集されます。

私が新卒で地元の労災病院に就職しました。労災病院は病床数300床を超え、臨床検査技師は約20人が働いていました。

当時の部門構成は以下の通りです。

図(イメージ図/部門構成)

担当する仕事は、配属された部門の仕事だけです。

中小規模の病院は広く浅く仕事を担当する

一方で、大病院ほど規模が大きくない病院では、部門が細かく分かれていません。そのため、特定の業務だけを担当するのではなく、その病院で実施しているすべての検査を全員で協力して行います。

例えば、下に紹介する京町病院は、長崎県佐世保市にある病床数48床の病院です。

京町病院の求人で挙げられている仕事内容は、以下の通りです。生理検査がメインと書かれていますが、検体検査も仕事内容に含まれています。

つまり、この病院では、同じ技師が生理検査も検体検査も担当します。

私が働いたことがある病床数80床の病院では、7人の臨床検査技師が働いていました。私は検体検査の担当でしたが、入院患者の飛び入りのエコー検査や心電図測定が出されたときには、生理検査を実施していました。

なおこの病院では、技師長の方針で検体検査担当と生理検査担当に分けていました。しかし、現実はうまく機能していませんでした。ほとんどの技師は、検体検査と生理検査の両方を実施していました。

規模の小さい病院では、大病院ほど技師の数がいません。そのため、仕事の担当を分けるのではなく、全員で業務を分担して仕事をします。

当直・オンコール対応がある

病院で働く臨床検査技師の特徴の1つは、当直・オンコール対応があることです。同じ臨床現場で働く場合でも、クリニックではこれらの業務はありません。

当直は、病院にはいますが、仕事がある場合とない場合があります。検査オーダーが出されればずっと仕事をしなければなりませんが、検査オーダーが出なければ朝まで寝て過ごすこともできます。

オンコール対応の場合は、基本的には休日と同じように自宅で過ごすことができます。しかし、検査のオーダーが出されると、病院から連絡が入り出勤しなければなりません。

当直・オンコール対応は、病院によって有無が異なります。また、運用方法もさまざまです。

例えば、下に紹介する聖隷富士病院は、静岡県富士市にある病床数151床の急性期病院です。

聖隷富士病院から出されている求人では、以下のように当直とオンコール対応の両方があることが挙げられています。

また、次に紹介する病院は、長崎県にある長崎百合野病院です。

この求人では、当直はありませんが、オンコール対応があります。

オンコール対応の担当日は、ほぼ自宅待機の状態です。近所のスーパーに買い物に行くくらいなら外出できますが、いつ病院から電話がかかってくるかわからないので、何もできないのが実情です。

また、病院によってオンコール対応のシフトも特徴があります。

私が働いたことがある病院の中には、週ごとにオンコール対応をローテーションしていた病院がありました。つまり、1週間ずっと自宅待機の状態です。

担当が当たっているときは、週に何回かは夜中に病院に呼ばれて、検査業務を行っていました。もちろん通常の日勤業務もあります。そのため、オンコール対応が当たった週は睡眠不足で、体力的にかなりしんどかったことを覚えています。

なお、その病院も最終的には、週ごとではなく、日ごとにオンコール対応をローテーションする運用に変わりました。

オンコール対応がある病院で働くときには、事前にシフトの組み方についても確認しておくようにしましょう。

病院で働くメリット・デメリット

臨床検査技師の働き先は、病院以外にもクリニック、検診センター、検査センターなど幅広いです。

そのなかでも病院で働くメリットはあるのでしょうか。また、どのようなデメリットがあるのでしょうか。

さまざまな症例・検査を経験できることがメリット

標榜している診療科が多い総合病院であれば、病院内で実施する検査項目も多いです。これがクリニックであれば、診療科が少なく、特定の検査に限定されます。

病院は基本的に、病気を治療する人が来ます。例えば、健診センターは、基本的には健康な人が行きます。何かしらの病気の既往があっても、寝たきりや意思の疎通が全く取れない人は来ません。

また、検査センターは患者さんが来るわけではないので、生理検査は実施しません。

病院であれば、何かしらの病気を抱えている患者さんが来ます。検査の内容も、検体検査、生理検査と幅広く経験できます。

多くの職種と協力して仕事をする必要がある

病院は、医療に関わるあらゆる職種の人が働いています。具体的には、医師、看護師、薬剤師、放射線技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床工学技士、視能訓練士、社会福祉士、メディカルクラークなどです。

これらの職種の人と協力して仕事を進めなければなりません。具体例の1つとしては、委員会活動があります。

輸血や血液製剤の適正使用を管理する輸血療法委員会では、薬剤師から血液製剤の使用実績や在庫管理方法の情報収集をします。

医療安全に関する委員会では、病院内のすべての部署が参加するので、全職種の仕事のリスク管理を担うことになります。

また、私が働いたことがある病院では、放射線部と臨床検査部が共同で休憩室を使用していました。そのため、昼休憩のときには放射線技師の人と一緒にご飯を食べ、仕事の話以外にもプライベートの話をしていました。

このように、病院で働く場合は、多くの職種の人と良好な関係を築きながら仕事をしなければなりません。

規模が大きい病院・医療法人であれば異動がありうる

私が働いたことがある医療法人は、病院とクリニック2つがありました。それぞれの拠点は約10km離れていました。

2,3年に1度、人事異動があり、病院からクリニックに異動になることがありました。

その場合は、仕事内容だけでなく、出勤先も変わります。そのため、通勤時間が変わります。

病院の求人に転職するときに求められる経験

病院の求人に転職するときには、どのような経験が求められるのでしょうか。病院以外のクリニックや検査センターで働いていても転職することはできるのでしょうか。

即戦力を求めている求人が多く、あなたの経験を活かせる求人に応募する

最初の章で紹介した行田総合病院で検体検査の担当者を募集している求人では、検体検査経験が必須条件に挙げられています。

病院に限らず、クリニックや検査センターで検体検査に従事していれば、応募して採用される可能性が高いです。

また、長崎県の長崎百合野病院から出されていた求人は、生理検査と検体検査の両方を担当します。そのため、応募条件には免許だけでなく臨床経験も挙げられています。

これは、生理検査の経験が必要ということです。

 

エコー経験があれば選択肢が広がる

聖隷富士病院から出されていた求人は、生理検査と検体検査の両方を担当する求人でした。しかし、この求人で求められる経験は生理検査しか挙げられていません。

私が働いていた病院で、主に心エコーを担当していた技師が退職したときの話を紹介します。

当時は心エコーが撮れる人がその人しかいませんでした。その技師が退職することが決まり、新たに募集をかけたときの条件は「心エコー経験者歓迎」でした。

その病院は、検体検査と生理検査が部門で分かれていませんでした。便宜上担当を分けてはいましたが、ほとんどの技師が検体検査も生理検査も担当する職場でした。

その求人に心エコーの経験がない人が応募してきていましたが、面接の段階で断られていました。

エコー検査は、検体検査と比べて診療報酬の点数が高く、病院としては少しでも多くのエコー検査をしたがります。

そのため、エコー経験があれば応募できる求人の選択肢は広くなります。あなたにエコー検査の経験が豊富にあれば、自信をもって病院への転職活動ができます。

まとめ

ここでは臨床検査技師が病院の求人の応募するときの仕事内容、求人で求められるものについてくわしく解説しました。

規模が大きい病院では、部門が分かれています。そのため、特定の検査だけを担当することが多いです。一方で、中小規模の病院では、技師の人数も少ないので、広く浅く仕事を担当します。

また、当直やオンコール対応があるのも病院勤務の特徴です。

クリニックや検診センターと違い、病院であれば幅広い症例や検査を経験できます。働いている職種も多く、あらゆる職種の人と協力して働かなければなりません。

病院の求人は、即戦力を求めていることが多いです。そのためあなたの経験と合致する求人を見つけることができれば、採用される可能性が高いです。特にエコー経験があれば優遇されたり、採用される可能性が高まったりします。