臨床検査技師が働く場所は、病院や検査センターだけではありません。病院や検査センターと比べると求人数は少ないですが、クリニックで働くことを考える臨床検査技師もいます。

では、クリニックの中途採用応募に申し込むときに、どのように求人を見ればいいのでしょうか。仕事内容や勤務形態はどのようになっているのでしょうか。

ここでは、臨床検査技師がクリニックの求人を探すときのポイントをくわしく解説します。

クリニックでの仕事内容の特徴を理解する

臨床検査技師の多くが働いているのは、病院か検査センターです。これらに比べるとクリニックの求人は少ないです。

クリニックで働く臨床検査技師はどのような仕事を担当するのでしょうか。病院や検査センターとの違いについても触れながら解説していきます。

検体検査は外注する項目が多い

クリニックは病院と比べてスペースが少ないです。そのため、検査機器を設置しておらず、ほとんどの検体検査を外注しているクリニックが多いです。

例えば、下に示すのは愛知県名古屋市にあるけやき内科から出されている求人です。

この求人で挙げられている仕事内容は、以下の通りです。採血が含まれますが、検体検査はありません。

つまり、このクリニックでは、採血は実施しますが、検査は外注している可能性が高いです。

また、検体検査は、検査機器のグレードによって検査できる項目が大きく異なります。クリニックは病院と比べてスペースが狭いので、簡易の検査機器しか置くことができないことが多いです。

例えば、下の写真は、内科のクリニックで使用している検体検査機器です。

図(写真/検体検査機器)

そのため検体検査は、クリニックの医師の専門領域をカバーできるような項目を中心に実施することが多いです。

私が以前働いていた糖尿病が専門の先生のクリニックでは、内科系の検査はクリニック内で実施していました。一方で、専門ではないリウマチ領域の検査は外注していました。

生理検査を担当する求人が多い

さきほど解説した検体検査は、検体検査を実施するためだけに臨床検査技師を雇っているクリニックはほぼありません。

クリニックの求人の特徴の1つは、生理検査を担当する求人が多いことです。検体検査と兼任することや、生理検査だけを担当する求人もあります。

実際の求人例を2件紹介します。

1件目の求人は、神奈川県川崎市にある川崎中央クリニックから出されている求人です。

この求人の仕事内容の欄は、以下の通りです。仕事内容はエコーと脳波のみで、検体検査は挙げられていません。

川崎中央クリニックは、脳神経外科が中心のクリニックです。そのため、エコーのなかでも頸動脈エコーや脳波測定ができる人材を求めています。

2件目の求人は、岡山県瀬戸内市にあるおさふねクリニックから出されている求人です。

おさふねクリニックは、一般内科だけでなく、リウマチ科、消化器内科も標榜しているクリニックです。

この求人の仕事内容の欄は、以下の通りです。検体検査と生理機能検査が挙げらています。

リウマチ科診療では、関節エコーは汎用の診断ツールです。また、消化器系の疾患に対しては診断に腹部エコーを利用することもあります。

このように、クリニックでは生理検査を担当する求人が多いです。

病理検査、細菌検査はクリニックではやっていない

ここまで検体検査と生理検査について解説しましたが、そのほかの検査をクリニックで実施することはありません。

具体的には、病理検査と細菌検査はクリニックでは実施しません。これらの検査が必要なときには外注に出すか、大規模病院へ紹介します。

あなたが病理検査や細菌検査の担当を希望するのであれば、規模の大きい病院か検査センターの求人を探すようにしましょう。

臨床検査技師がクリニックで働くメリット・デメリット

続いて、臨床検査技師がクリニックで働くメリット・デメリットを確認しましょう。病院と比べてどのような違いがあるのでしょうか。

オンコール対応や当直はない

クリニックは、医療法の定義では病床数が19床以下です。しかし、ほとんどのクリニックは無床で、外来対応しかしていません。

そのため、クリニックで働く臨床検査技師が働くのは、外来診療時間だけです。

前の章で紹介した川崎中央クリニックの求人では、当直もオンコール対応もないことが記載されていました。

オンコール対応がないということは、プライベートのスケジュールが組みやすいです。夜中に電話で起こされることもありませんし、休日に遠出をすることもできます。

また、私は枕が変わるとなかなか眠れません。そのため、総合病院に勤務していた時の当直では、ほとんど寝ることができず、当直明けの午前勤務は毎回しんどかったです。クリニック勤務であれば、そのような想いをすることはありません。

休憩時間を確保しやすい

クリニックの外来診療は、朝から夕方までずっと続くわけではありません。午前と午後の診療の間には数時間の隙間があります。

例えば、前の章で紹介した岡山県にあるおさふねクリニックの外来票は、以下の通りです。受付時間は午前が12時半までで、午後は16時からです。

引用:施設案内|おさふねクリニックより

病院であれば、受付時間外であっても入院患者や救急の患者の検査オーダーが出されます。

一方で、クリニックは基本的に入院や救急の対応はありません。そのため、外来診療を行っていない時間は落ち着いており、休憩時間も確保しやすいです。

病院と比べて仕事内容は限定される

クリニックは病院と比べて標榜している診療科が限られます。そのため、担当する検査内容も病院と比べると限定的です。

前の章で紹介した愛知県にあるけやき内科は、呼吸器系疾患が専門のクリニックでした。

そのため、挙げられている仕事内容も肺機能検査、呼気NO検査などの呼吸器系の検査が中心です。

あなたが呼吸器系の検査経験が豊富であれば、採用された直後から即戦力として働くことができます。

また、下に紹介する求人は、神奈川県にある眼科医院から出されている求人です。

この求人で挙げられている仕事内容は、以下の通りです。眼科のクリニックなので、眼科の検査だけです。

このように、クリニックでは診療科が限られるので、担当する検査の内容も病院に比べると限定的になります。

クリニックでは、診療科が増えていくことはほぼありません。一度仕事に慣れれば、新しい検査を導入することはほとんどないので

従業員数が少ないので人間関係は狭い

クリニックで働く臨床検査技師は少ないです。ほとんどのクリニックは1人、2人しか雇われていません。

臨床検査技師の数だけでなく、医師、看護師の数も病院と比べると少ないです。そのため、人間関係はどうしても狭くなります。

私が働いていたクリニックは、医師が1人、看護師が7名、臨床検査技師が1人、放射線技師が1人、医療事務員が2人でした。少人数で構成されるので、すべての職員と関わることになります。

もちろん、規模の大きい病院で働くときも、すべての職員と関わりますが、クリニックの方が1人1人とのかかわりが濃密になります。

まとめ

ここでは、臨床検査技師がクリニックで働くときの仕事内容、求人の特徴について解説しました。

クリニックでは、検体検査は外注する項目が多いです。一方で、多くの求人で生理検査が仕事内容に挙げられています。病理検査と細菌検査は、クリニックで行うことはありません。

病院と違い、オンコール対応や当直はありません。入院や救急の対応がないので、昼の休憩時間の確保もしやすいです。

一方で、仕事内容は標榜している診療科の内容が中心になるので、限定されます。従業員数も少ないので、1人1人の関係性が病院勤務と比べて大切になります。

これらの特徴を理解して、クリニックへの転職を考えるようにしましょう。